Researcher column
『Live with a sauna』

平成30年3月8日

サウナに関する社会調査について

特任研究員 高井道人

サウナに関する社会調査は前例を見ない、挑戦的な試みです。なぜいままで行われなかったのか。それは、お風呂の国日本であるが故に、お風呂や温泉にばかり焦点があたっていたことが、理由の一つとしてあげられます。近代以降日本では、湯船に浸かる習慣が大衆に浸透しました。しかしながら日本では古来より、湯船よりも蒸気浴の方が一般的だったのです。さらに言えば、人類史ではバイカル湖周辺で北京原人の時代から蒸気浴が嗜まれていたとする説もあります(山内昶「風呂の文化誌」文化科学高等研究院出版局, 2011年)。多くの人が思っているよりも、実は蒸気浴と人間の関係は根深いのです。

日本では、火山国であることから温泉が多いことや技術の発展方向、温浴業界の商業的成功などが相まって、湯船に浸かる文化が台頭してきました。この潮流に従い、サウナの利用方法が広く知られることも無くなってきたことは、想像に難くありません。日本サウナ総研は、そうしたサウナの正しい利用方法を振興することを通して、社会の人々に貢献することを目的としています。

そうした意味で、サウナが一般の人々にどのように利用されているのか。また、どの程度サウナについて理解しているのかを把握することは、サウナと社会の関係性を考える上で避けて通れない課題です。こうして、サウナ総研ではサウナの社会調査が行われる運びとなりました。2017年に第1回調査が行われ、今回が第2回となります。今後も定期的に行うことで、社会におけるサウナの立ち位置を正確に議論する先駆的な資料として、有効な情報を発信していくよう努めます。

今回私は、単純な集計を担当しました。その結果として注目したい点は、「サウナの温冷浴」があまり実践されていないことです。サウナはサウナ室(温浴)だけでは成立せず、冷浴つまり身体を冷やすことで、その効果を何倍にも増加させます。一般的にサウナと水風呂の組み合わせに関しては、「つらい」「心臓に悪そう」といったイメージが付き纏います。しかしながら、温冷浴の効果は医学系研究でも数多く実証されており、正しい利用方法を守れば、身体の回復をはじめとしたさまざまなメリットを実感出来るのです。

サウナ人口や、近年のサウナ・ブームに比して、その大きな効果を得られていないことは、素直にもったいないと実感せざるをえません。「健康ランドでどう過ごそうが、私の勝手じゃないか」と云われる方も多いと思います。ですが、お酒の楽しみ方を教わって初めてお酒の美味しさがわかるように、温浴施設での楽しみ方も、もっと工夫できる点があると思うのです。今よりもっと気持ちよくなれるならば、それを取り入れてみたいと考えるのも人情ではないでしょうか。

温冷浴の認知度の低さは、温冷浴の振興を当機関が目的とする上では、普及するやりがいを感じるよい材料となりました。同時に、良きサウナ室や温浴施設を普及するための材料として、「温浴施設で大事な点」も注目すべき点かと思います。「通いやすさ」「利用料金」「清潔さ」の三点がとくに挙げられます。「通いやすさ」「利用料金」は立地や資本に依存しますが、「清潔さ」を重視する人が多いということは、今後念頭におくべき有効材料です。温浴施設が清潔さを保つということは、湿気や洗いかすなどを考えると容易いことではありません。

一方で、自分が清潔になりに行く場所でもある以上、清潔さに多くの人が関心を払うことも納得できます。

このような材料を、今後も調査を行うことで積み重ねて行き、温浴業界に大きく貢献することを努めてまいります。サウナを愛する人々にとって、またサウナを知らない社会の人々にとっても、健康でリフレッシュできる最上の空間を普及・促進できれば、本調査を続けていく甲斐が増していきます。今後サウナの正しい利用方法が認知されること、そして多くの人々の生活がさらに潤うことを願ってやみません。


次回のリレーコラムはパンダちゃんにバトンタッチです!